【在宅看取りを考える】ターミナルケアでのケアマネの役割

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在宅での看取りを選択される人が増えてきました。ケアマネジャーとして、ターミナルケアにおけるケアマネジメントの留意点を知り、ケアプランに反映できるようにしてくことが求められます。 ここでは、ターミナルケアの基本と看取りの時期に応じたケアマネの役割などについて解説していきます。

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ターミナルケアとは

人生の終末期には積極的な治療や延命を行うか、残された時間を本人らしく充実したものにするかの決断を迫られることになります。 ターミナルケアとは病気や老衰などにより余命がわずかとなった人たちの残りの時間を自分らしく、充実した時間にすることで、満足のいく最期を迎えることが出来ることを優先するためのケアのことです。 人それぞれ、様々な人生を送ってこられ、最重要な最期をどのように迎えるかを本人、家族としっかり話し合っていく必要があります。 しかし、ターミナルケアは延命をしないという判断にも通じますので、医療関係者とも連携を取りながら、慎重に進めていくことがケアマネジャーには求められます。

同じく終末期のケアには緩和ケアがあります。緩和ケアとはがん患者の痛みの苦痛を和らげて、QOLの改善を図るためのものです。緩和ケアは終末期だけでなく、がんの痛みを緩和しながら治療していく要素も含まれるところに、ターミナルケアとは違いがあります。

ターミナルケアを受ける場所

看取りといえば、昔は大家族であって、家で家族に看取られる時代があり、その後は病院で終末期を迎えるのが主流でした。しかし、最近では在宅や施設での看取りの割合が増えてきています。 それぞれの場所で、ターミナルケアを受ける際のメリットとデメリットについてお話します。

在宅でのターミナルケア

内閣府が平成24年に行った「高齢者の健康に関する意識調査」において、「最期を迎えたい場所」への回答は60~74歳では53.7%、75歳以上では56.3%の人が自宅と答え、病院などの医療機関と回答した60~75歳の27.2%、75歳以上で27.6%という割合を大きく上回る結果となりました。

在宅で看取るメリット

自宅では、自分のペースで生活することができ、リラックスした生活を送ることもできます。残された時間をゆっくりと家族と一緒に過ごせることが最大のメリットと言えます。 家族にとっても通院にかかる身体的な負担や、そばに居られないときの精神的な負担を軽減することができます。 また、病院や施設に比べると費用の面でも抑えることができるため、経済的な面でも負担を減らすことが可能になります。

在宅で看取るデメリット

家族などの誰かがいつもそばにいる必要があります。そのため、介護離職で仕事を辞めたり、休職したりと家族の生活を変える決断をしなければならないような状況も考えられます。 また。ターミナルケアでは予期しない状況の変化がみられるために、精神的な負担や24時間介護をしながらの毎日の生活は体力的にも負担がかかります。

施設でのターミナルケア

一方前出の調査で特別養護老人ホームなどの福祉施設と回答した割合は、60~75歳で5.3%、75歳以上で3.7%という結果でした。 有料老人ホームた介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどの施設は看取りまで実施する施設が前提であるとともに、その実績も増加してきています。

施設で看取るメリット

施設での看取りを選択した際のメリットは、身体的なケアをプロの介護職員に任せることができるため、家族は精神面でのケアを行うことに集中することが可能になります。夜間の休息も取りやすく、家族の身体的な負担が少なくなります。 また、施設の職員とのコミュニケーションにより、最期の時に向けての不安やストレスの緩和を図れます。

施設で看取るデメリット

施設は面会時間が設けられているため、常に一緒の時間を過ごすことに制約が出ます。また、施設の居室は自宅とは違い職員が巡回に来たり、周囲の音や会話が気になるなどリラックスができる環境とは言いにくい点が挙げられます。 費用面でも、期間が決まっているわけではないため、高額な施設費用の経済的負担を長期間強いられる場合もあります。

在宅でのターミナルケアのポイント

在宅でターミナルケアを行うためには、人手の確保は必須となります。本人だけでなく家族も含めた精神的なケア、急変時の対応などチームが一丸となってケアに携わっていく必要があり、ケアマネジャーはその調整役として動いていくことになります。

看取りまでの段階に応じたケアマネの動き

第一段階

終末期ケア開始時 入院していただ場合は退院し在宅でターミナルケアを開始する場合だけでなく、もともと在宅で生活されていた人が、予後を鑑みてターミナルケアを開始する場合もあります。 ケアマネジャーや主治医、訪問看護師、ヘルパー等関わるチームメンバーが連携を取りやすい顔の見える関係づくりをしていきます。

退院時カンファレンスやサービス担当者会議でケアの目標や目指していく状況、方向性を共有、確認しておくことが必要な時期となります。本人や家族の意向をしっかりと理解しておき、自分の言葉で表現することが難しそうな場合には代弁をすることもケアマネジャーにとって必要と言えます。 キーパーソンや連絡の取り方などを決めて、漏れなく、無駄のない情報共有ができる連絡体制を整えておきましょう。

第2段階

緩やかな病状変化期 食欲不振や便秘、ADLの変化など少しづつ何らかの状態の変化がみられるようになってきます。免疫力が低下すると発熱や肺炎の徴候などが見られることもあります。 ケアマネジャーとしては状態の把握と共有を行います。この時期になると、最初は在宅での看取りを希望していた本人や家族には今後に対する不安が少なからず増していきます。気持ちに寄り添い、意向のの再確認をしておく必要があります。 主治医や訪問看護師に対しては今後予測される状況を本人または家族に話をしてもらいます。

第3段階

急激な病状変化期 病状の変化が急速に進む時期です。ADLの急激な低下や急変の可能性も大きくなります。痛みや呼吸の状態の悪化など状況の変化が速いため、スピーディーな対応が必要となります。 ケアマネジャーとしてチーム間での情報の共有や支援の方法には都度対応していくように心がけていきましょう。本人や家族の精神的な負担がさらに大きくなる時期です。 苦痛の緩和が出来るように、きめ細やかなケアの調整が必要にななってきます。

第4段階

看取り期 日々状況の変化が見られ、看取りを迎える時期になります。1日のうち臥床している時間が長くなり、今までできていたことができなくなります。尿量の減少や痰の貯留が見られ、次第に意識レベルの低下や呼吸状態の悪化が見られてきます。 ケアマネジャーとして、本人、家族に寄り添い苦痛の緩和によりできる限り安楽に過ごせるように調整を行うことと、家族が満足できる最期を迎えられるようにしていくことが必要になります。 最期の時を迎えた時が休日や夜間などの場合にはどのような連絡体制を取るのかをしっかり確認しておきましょう。

情報の共有

ターミナルケアを実施するにおいて、速やかに情報の共有することは重要なポイントです。しかし、何か状況の変化があった場合に情報が錯綜してしまうことはよくありがちです。 医療と介護の連携をどのようにとっていくのかや訪問介護の場合では担当者と事業所との連絡をどうするのかを最初に取り決めをし、共有しておくことで、スムーズな連携を図ることができます。また、連絡先は一覧にしておくことで、急変時にも慌てずに連絡を取ることができます。

医療との連携

状況の変化により、本人や家族の不安が増してきたり、本当に在宅での看取りの選択で良いのかというような葛藤が現れてくることもしばしば見られます。 ケアマネジャーとして不安や意向をしっかりと聞き取ることはもちろんですが、今後起こりうることなど医療的な事項についてはあいまいに回答せずに、訪問看護や主治医に繋ぎ、速やかな対応と不安の緩和を図れるように調整していくようにします。 ケアする介護スタッフも同様に不安を抱えています。状況や今後予測されることとその場合の対応についてはしっかりと共有していき、ケアに携わってくれている介護スタッフのフォローもしていきましょう。

ターミナルケアのケアプラン

平成30年度の介護保険の改正において、末期の悪性腫瘍の利用者に対するケアプランの変更の簡素化が認められました。 末期の悪性腫瘍と診断された場合であって、日常生活上の障害が1か月以内に出現すると主治医が判断した場合には、主治医の助言を受けた上で状態変化を想定し、今後必要と見込まれるサービス事業者を含めたサービス担当者会議を開催し、予測される状態変化と支援の方向性について確認の上、ケアプランを作成します。 これにより、状態変化があった場合に、主治医の助言を得たうえでサービス担当者会議の招集をすることなくサービス内容の修正を行うことが可能となりました。 ケアマネジャー自身も通常の場合よりご自宅への訪問、状態の把握とサービス変更の検討など支援にかかる負荷が増えることについては「ターミナルケアマネジメント加算」という加算で評価されることになりました。 医療的な部分が大きい、先を予測したケアプランを作成することは容易ではありませんが、主治医や訪問看護との連携を密にし、助言をもらいながらケアプランの作成を行ってください。

在宅でのターミナルケアを成功させるためには、チーム全員の方向性の共有と連携が大切です。最初はうまくケアプランが立てられなかったり、尻込みしたりすることもあるかもしれませんが、是非チャレンジして行ってくださいね。

寺岡 純子

合同会社カサージュ 代表
主任介護支援専門員/BCAO認定事業継続管理者/看護師
急性期の看護師を経験した後、1999年に介護福祉の世界に転向
前職場では、介護事業の運営と約400名の部下育成に携わる
現在は、独立し居宅介護支援事業所を運営する傍ら、介護研修事業を展開
特に、介護BCPは介護現場とBCPの両方を理解している講師としてさまざまな方面から高く評価をいただく

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