新人のケアマネの悩みとして、訪問看護を利用する際に介護保険か医療保険かどちらを選ぶべきなのか迷うことがあるのではないでしょうか。
中にはどちらでもよくて利用者にとって安くなるほうを選べばよいとかいう人もいます。
実はどちらでも選べるというのは大きな間違いで、きちんと使い分けが必要になっているのです。
ここではその使い分けの方法を説明していきたいます。正しく理解し、間違った使い方をしないようにしていきましょう。
訪問看護とは
病気や障害があっても住み慣れた地域で:暮らしていくためには、医療のかかわりが欠かせません。療養生活の中でその人らしい生活を送っていくために看護師や理学療法士、作業療法士などが自宅を訪問して看護のケアやリハビリを行うサービスが訪問看護サービスです。
訪問看護サービスは介護保険を利用する場合と医療保険を利用する場合があり、どちらの保険制度を利用するのが正解なのかが新人ケアマネを悩ませるところになっています。
介護保険・医療保険は選べる?
結論から言うと、介護保険を利用するか医療保険を利用するかを利用者やケアマネジャーが選ぶことはできません。年齢や病状などによりどちらの保険制度を利用するかは決まっています。
ただし、介護保険を利用して訪問看護を受けいた利用者の褥瘡が悪化したり、病状が変化し頻回の訪問看護が必要な状況になった場合などには医療保険に切り替えるなど、利用する保険制度を変更する場合もあります。
いずれの場合にも主治医が訪問看護が必要であると指示を出すことが前提になっています。
介護保険と医療保険の比較
介護保険 | 医療保険 | |
利用者の条件 |
1、65歳以上 要支援。要介護認定を受けている 2.40歳以上65歳未満 16の特定疾病により要支援・要介護認定を受けている |
1.介護保険の対象でない 2.がん、人工呼吸器の利用など厚生労働大臣が定める疾病(※)の場合 3.病状の悪化により主治医より特別指示書の交付がされた場合 |
利用金額例(加算除く)
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30分:4630円 60分:8160円 (地域加算なし、要介護、看護師の訪問) |
月の初日:12950円 2日目以降:8540円 (通常の看護師の訪問) |
サービスの利用料金 | 所得による自己負担割合1~3割 | 加入している健康保険の負担割合1~3割 |
利用回数の制限とサービス時間 |
介護保険の支給限度額内での利用 1回当たりの訪問時間は90分以内 |
通常週に3回までの利用、難病患者等では1日複数回の訪問が可能 特別指示書に基づく場合は週4日以上の訪問が可能 1回当たりの訪問は30分以上90分以内であるが、医療依存度の高い重度者に対しては週1回の90分以上の長時間訪問看護が可能 |
(※)厚生労働大臣が定める疾病等
①多発性硬化症②重症筋無力症③スモン④筋萎縮性側索硬化症⑤脊髄小脳変性症⑥ハンチントン病⑦進行性筋シストロフィー⑧パーキンソン病関連疾患(進行性角上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、およびパーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって生活機能障害がⅡ度またはⅢ度のものに限る))⑨多系統萎縮(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症およびシャイ・ドレガー症候群)⑩プリオン病⑪亜急性硬化性全脳炎⑫後天性免疫不全症候群⑬脊髄損傷⑭人工呼吸器を使用している場合
訪問看護を利用するためには
主治医への相談
訪問看護を利用するためには主治医の指示書が必要になります。主治医から訪問看護をケアプランに位置付けるように言われる場合もありますが、利用者と話をしてアセスメントで訪問看護が必要と判断した場合にはケアマネジャーから主治医に連絡を取り、訪問看護の必要性についての意見を聞かなければなりません。
主治医によっては連携の取りやすい訪問看護事業所を指定してくる場合もあるようです。利用者の不利益にならないように留意し、同意を取りながら訪問看護事業所の選択を進めていきましょう。
指示書の種類
訪問看護で使用する指示書は以下の3種類があります。指示書は訪問看護事業所のものを使用する医師もいれば自分の医院で専用のものを準備されている場合もあり、必ずしも訪問看護ステーションのものを使用しなければならないという決まりはありません。
指示書の取得においては、初回はケアマネから主治医にお願いする場合もあれば、訪問看護ステーションから主治医に依頼をする場合もあります。どちらが主治医にお願いするのかを明確にしておき、指示書が届いていないためにサービスの提供が始められないということにならないように気を付けましょう。
2回目以降は訪問看護ステーションから主治医に依頼されることが多いように思います。
訪問看護指示書
通常の訪問看護の指示に使用します。病名や使用している薬剤、訪問看護の指示内容、緊急時の対応、留意点などが記載されます。
介護保険でも医療保険でも内容は同じです。
訪問看護指示書の有効期間は最長で6か月間になります。
特別訪問看護指示書
訪問看護指示書を交付されている利用者の急性増悪などで、頻回の訪問看護が必要と判断された場合には特別指示書が交付されます。
特別指示書が交付された場合は介護保険の利用者であっても医療保険の利用に切り替えます。
特別指示書の有効期間は指示日より14日間となっており、月1回の交付となります。ただし、気管カニューレを使用している場合と真皮を超える褥瘡のある利用者に対しては、月に2回までの交付が可能です。
在宅患者訪問点滴注射指示書
週3回以上の点滴注射が必要な場合に交付される指示書になります。点滴注射は末梢静脈からに限られます。
指示の有効期間は最長7日までとなり、引き続き点滴注射が必要な場合には再度交付する必要があります。
週3回未満の点滴注射には適応されないため、この場合には訪問看護での点滴注射は不可となり注意が必要です。
訪問看護の利用者負担の減免
訪問看護の利用者が指定難病による医療費の助成制度の申請をしており、医療受給者証の交付を受けている場合や、精神疾患により自立支援医療(精神通院医療)の対象になっている場合には自己負担額の減免を受けられます。申請の有無と医療証の確認をしておきましょう。
この場合、サービスを提供する訪問看護ステーションは都道府県の指定を受けている事業所である必要があります。介護保険の開設の申請だけではこの指定を受けることは出来ず、別途申請が必要であることから、ケアマネから事業所にサービスの依頼をするときには指定の有無を確認を忘れないようにしましょう。
指定難病患者の医療費助成の申請についてはコチラの記事も参考にしてください。
おわりに
利用者の訪問看護の利用の仕方を介護保険と医療保険に分けて説明しました。介護職の資格を持つ新人ケアマネジャーは医療系のサービスに対しての苦手意識が強い傾向にありますが、介護と医療は切っても切れない関係です。介護保険と医療保険の制度の違いについてはしっかりと知識をもって利用者に説明するときに困らないようにしておきましょう。