中小介護事業の経営者の悩みその②従業員の育成に関すること

介護

介護事業の経営者の悩みは様々ですが大きく分類すると経営状況や人材育成に関することに集中しています。特に人材育成に関しては管理者の育成が上手くいかないために、優秀な介護職員が辞めてしまうなど経営にも打撃を与える状況になりかねません。

に続いて、中小介護事業所経営での二つ目の悩み、従業員の育成に関することで人材育成の仕組みの失敗パターンでよくあるものをご紹介します。

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1.研修や指導を現場に任せて、内容が非常に薄い


多くの事業所で人材育成が上手くいかないのはこのパターンです。新入社員のOJTなどを現場で実施することは有効ですが、それだけだと足りない部分や、教える人に力量によって効果にばらつきが見られます。介護職のOJTにはご利用者の背景や状況を配慮しながらケアをするという点においても、教え方にも工夫が必要です。介護福祉士を養成する専門学校では教師や実習先の実習担当者が上手く教育をしてくれるため、実習生は効果的に学べるだけでなく、自分が教えられた経験も得ることが出来ます。しかし、実際の介護の現場では十分な実践の場での教育を受けていない介護職がほとんどなのですつまりは、相手を伸ばすOJTというものを自分も経験したこともなければ学んだこともないのです。このような状況で良い人材育成などできるはずがないのです。

2.現場を知らない講師による実務で使えない研修

良い経営者は外部の研修も取り入れてよりレベルの高い人材育成をしようとされます。しかし、ここにも落とし穴があるのです。講師の選定の際には介護の現場のことを理解できている講師を選んでいないことが見受けられます。有名だからやよさそうだからで講師の選定をしてしまうと、高い講師料を払って、全く役に立たない研修をすることになるのです。例えば接遇の研修をするのに、ホテルやCAで行われていいるような研修が介護の現場にマッチすると思いますか。

その時は、なるほどと聞いていても実際の現場で生かされることはまずないと考えてよいでしょう。介護には介護の接遇があり、それを理解している人を講師として選ぶべきなのです。
知名度だけに踊らされていると、現場からは感謝どころか不満の声しか上がってこないのです。

3.研修を計画しても参加者が少ない

介護の現場ではメニューにもよりますが、職員全員が時間を合わせられる機会が少ないことも多くあります。介護事業所の運営においては年間で必要な研修が定められていますが、実施を昼の時間内に設定される事業所もあれば、夕方に設定される事業所もあります。いずれにしても、全員が参加できることは少ないのが現状ではないでしょうか。やむを得ない理由で参加できない職員ももちろんいることでしょう。しかし、いつも同じ職員が参加できないような状況は避けるべきです。このような点で研修の開催日には配慮が必要であることと、参加者が予定を調整できるように事前に研修の日は告知しておく必要があります。また、開催日の変更は極力しないようにし、研修の位置付けの意識が職員の中で上がるようにする工夫が必要となります。また、欠席者のフォローもしっかりと行いましょう。研修の様子を動画撮影しておき、欠席者へのフォロー研修を行うなど必ず全員が研修を受けられるようにしておきます。

事業所で実施される研修は業務の一環として行われるべきですので、勤務時間外に実施する場合には必ず残業手当や、時給の支払いをするようにしましょう。

4.階層別に研修を実施しておらず、現場向けの研修のみ

介護事業では現場スタッフの他に事業所の管理者を置く必要があります。経営者自らが管理者を行っている場合もありますが、管理者として従業員を雇用している場合もあります。介護職員のキャリアアップのための仕組みが求められていることも踏まえ、現場のスタッフのリーダー的な役割を持つ者もいるでしょう。何か問題が生じた時にすべてを従業員に責任を押し付けていないでしょうか。従業員の育成が出来ていない原因は経営者側に問題があると認識しておきましょう。
事業所内での年間計画に沿った研修はしていても、これらの職域に応じた個別の研修の実施が出来ていない中小規模の事業者には多いと思われます。しかしながら、階層別研修は将来的に経営者が頭を抱えるような事態に陥らないための、最も育成に力を入れるべきところであると言えます。

管理者の育成

事業所の管理者は介護保険においては重要な位置づけになります。 管理者の要件には必ずしも専門職の資格の必要としないメニューもあります。しかしながら 多くの知識と管理業務が求められます。管理者に必要な知識、スキルについては次のようになります。

介護業務・運営基準のマネジメントスキル

提供しているサービスが適正に実施されているかを管理します。サービスの内容や運営基準が理解できていないと適正かどうかの判断ができないため、管理者は自分のサービスメニューの運営基準は熟知しておく必要があります。それだけでなく、サービスの質がご利用者の求めているものになっているかをチェックしたり、新たなサービスの創造などを検討していき、顧客ニーズや時代の変化に対応できるようにしておく必要があります。

職員の人材マネジメントスキル

残業や休暇の取得状況の管理や、職場の雰囲気を把握し必要に応じて職員と面談や適切な指導をしたり、することで生じている課題を解決に導くことが必要になります。そのため、面談のスキルや指導のスキルが重要で、このスキルを持ち合わせていない管理者は職員の不満を増大させ、職員が定着しない事業所にしてしまいます。

また、スタッフの採用面接や、採用後の育成がスムーズに行えるようにマネジメントしていくことも管理者の仕事の一つになります。適正な人員の配置がされ、人材育成の行き届いていることが、介護職員が長く勤めたいと感じる事業所に繋がります。

収支の管理

事業所を運営していく上で、利益を出すことは必須のミッションになります。事業所を存続させるためには利益を出し続けなければなりません。そのために管理者は売上と費用の管理を行っていく必要があります。売り上げを上げるためには新規の利用者は毎月必須となり、そのためには営業のノウハウも必要になります。費用を削減する意識を職員にも持ってもらったり、実践する必要があります。ただし、適正な事業所運営に必要なものまで削減することがないように、計画的に管理する能力が求められます。

リーダーの育成

介護の現場には現場のスタッフのまとめ役のリーダーの配置が不可欠になってきます。厚生労働省が2017年に示した方針では、介護職のグループリーダーには一定のキャリアとして5年程度の実務経験のある介護福祉士を位置付けるとしています。リーダーの役割を果たすためのスキルは、介護技術だけでなく、介護や福祉に関連した専門的な知識、認知症のケアや資料に関する基礎知識、人間関係を円滑にできるコミュニケーションのスキルなどです。これらのスキルを身に付けることが出来るように計画的な育成の意識が経営者には必要となってきます。

現場スタッフの育成

現場の介護スタッフにはより良いケアの実現を意識した研修の実施が必要となります。入社時の研修やOJTを何となく実施するのではなく、到達目標を明らかにし、系統立てて実施することや教える側がどのような指導をしているのかを把握しておくことは、早期離脱を抑制するためにも重要なことです。特に、教える側がパワハラ的な指導を実施している事例はよく見られることで、これは教える側が正しい教え方を知らないことも原因の一つになっています。大事な人材を早々に失わないように注意しましょう。

また、年間研修に位置付けている研修の内容もより専門的で日頃のケアがより良いものになるような研修を組み立てましょう。何かの資料ををコピーしたものを読むだけのような形だけの研修では何の意味も持ちません。職員の時間を使って実施する研修は中身の濃いものにしていかなければ、人材の育成が出来るどころか、ケアの質の低下をきたし事業所の存続の危ぶまれるような状況にもつながりかねませんので注意が必要です。

このように、経営者は人材育成に対する意識をないがしろにしていると、事業所の運営に跳ね返ってくるという危機感をしっかりと持つことが重要なことだと思います。人材の育成に関してはしっかりと投資を行うことで、経営が上手くいく未来が見えてくるのではないでしょうか。