介護事業の業績とチームワーク

介護コラム
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介護事業所の悩みのNo.1は経営者側も、働くスタッフも人間関係の悪さ。経験上離職者の理由は、給与の低さより、人間関係の悪さの方が上回っていましたし、精神的なダメージを受けて休職に追い込まれる社員もみられました。

特定処遇改善加算の創設により、これからの介護事業所は、勤続年数の長い介護福祉士の資格を持ったスタッフの取り合いになると予想されています。いかにして、チームワークのよい働きやすく、やりがいを感じることの出来る職場にするのかが、事業所の命運を分けることでしょう。

そんなことが予測されるなかで、いち早く対応していけるかも、生き残りのポイントになってくるでしょう。

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介護事業所の組織体制

中小の介護事業所での組織体制は経営者自身が施設長や所長が管理者を兼ねている場合もあれば、別の場合もあります。次いでその下の体制として現場では主任やリーダーといった現場スタッフの中でも指導的立場にいる人と現場スタッフというような場合が多いのではないでしょうか。その中で、経営や人材のマネジメントができるような社員はどのくらいいるでしょうか。ほとんどが現場上がりで、マネジメントについての教育はほとんど受けたことがなく、自己流で行っている場合が多く見られます。このことが、介護現場でのパワハラや不適切な対応の元凶になっているのです。

トップダウンとボトムアップ型組織

トップダウンとは

トップダウンとは社長や経営者層が意思決定を行い、発せられる命令のことです。経営陣の意見が現場の業務を左右します。意思決定にかかる時間が短時間で済むため、スピード感を要求されるような業種やマニュアル化されているような業種には向いているのかもしれません。トップからの直接の指示であるため、信頼関係が構築できているような関係性のもとでは、連帯感をもって、皆が同じ方向を向く一体性のある組織運営ができるでしょう。また、そのトップの市場における能力が優れていれば、急成長を図ることもできると言えます。
その反面、トップの意思が優先されるため、部下は自分で考える必要がなくなり、能力の向上が図れない傾向にあります。何か問題が起きた時にも方針に反することが許されず、臨機応変な対応がされにくくなるリスクがあります。そのため、トップの判断ミスにより、重大な業績不振に陥る場合が見られます。

ボトムアップとは

ボトムアップとは、現場の意見や提案を吸い上げ、意思決定を行うやり方です。現場で得られる顧客のニーズや現状の課題、問題点など現場の声が経営層に届き、共有されます。市場ニーズをとらえることで新しいサービスやアイデアが生まれ、業績の向上につながりやすくなります。
また、現場の意見を経営層が受け入れりことで部下自身が自ら考え、行動できるようになりやすく、そこに裁量権を与えることで、部下は仕事に対する責任感や誇りを感じることが出来モチベーションが向上したり、能力アップにつながることが期待できます。
半面、ボトムアップでは現場に力があることが必要であり、課題に対する解決方法や新たなサービスなどを考え、判断できるような優秀な人材が必要となります。他のメンバーを管理できる人格と業務に関する知見が必要となります。

介護事業所で経営者の目標・方針を現場が具体化する

介護業界においてはトップダウンとボトムアップのどちらも必要となります。具体的には、全体的な経営目標は現状を把握しながら経営者層が設定し、その目標を達成するための方策や手段を現場で考えるというやり方です。一つの法人で複数のメニューを行っているような場合では、メニューごとに状況や抱えている課題が違います。業界全体で人材不足である中、トップダウンであれこれ現場で実施することに対して指示を出しても、現場の忙しさがわかっていないと反発をされることは目に見えています。
ですから、経営の数値目標は伝えながらも、どのようにしてその目標を達成していくのかの方法は現場にアイデアをださせ、行動させるのが最も効果的と言えます。

今までのリーダーシップは通用しない

介護業界のリーダーとメンバーの特徴

先に述べた通り、介護の現場でのリーダーは介護職としての技術や知識は十分にあり、人格もリーダーとしてふさわしいから選ばれています。昔であれば、年功序列で勤続年数が長い年上が偉そうにしていても通用していたのでしょうが、現代でそのようなことは全く通用しません。
介護業界の現状はほとんどが多職種からの転職者が占め、年齢と経験年数に関連性がないため、職場で最年少でリーダーとしてスタッフの育成にあたるという場面も多々あります。このような状況でいかにしてチ幅広い年齢層のチームをまとめ結果を出していくことを求められるのが介護業界と言えます。

チームリーダーのレベルアップが鍵を握る

ボトムアップが有効に機能するためには優秀な現場のリーダーが不可欠です。そのためには、リーダーの教育の体制を整え、積極的に実施する必要があるのです。
では、リーダーの教育とは具体的にはどのようなことをすればよいのでしょうか。

1.経営者やマネジメント層との定期的な面談を実施する。
経営者の考え方や思い、方針などは直接伝えた後も、リーダーからも現場スタッフに伝える必要があります。経営者の言葉がすべての人に響いているとは限らないからです。どこか他人事のように聞いているスタッフもいます。そんな時にでも身近にいるリーダーが繰り返し同じことを伝えることができれば、皆が同じ方向を向くことが出来るのです。そのために、経営者やマネジメント層はリーダーが当事者意識と責任感を持てるように定期的に面談を実施し、リーダーとしての責務を認め、話を聞く機会を持つようにします。

2.リーダーの考えを自分の言葉で言えるよう繰り返し、対話を行う。
リーダーはマネジメント層の考え方や方針を理解しつつ、現場では何が出来るのかを考えて、スタッフを動かす行動まで責任を持てるようにする必要があります。そのためには、自分の考えをきちんと言葉にして言えるように、マネージャーは聞く姿勢を持たなければなりません。そして、小さな目標の達成を繰り返すことによって、最終的な目標達成を果たしていけるようサポートします。

業績を上げることは、現場で働くスタッフの協力なしではなし得ないです。そのためには、全てのメンバーが当事者意識をもって、じぶん達の行動を考え、実行する意識を持たなければ成功はありえないでしょう。こ 大切なことは、行動を止めることなく継続できているか、出来ていないのであれば阻害している原因は何かを明らかにし、どうすればよいのかを考える事です。ここでも、リーダーを中心に現場のスタッフが我がこととしてとらえ、自分たちで解決策を出していくことです。
今一度事業所の雰囲気や組織のリーダーシップの在り方を見直し。業績の改善への戦略を立ててみてはどうでしょうか。

寺岡 純子

合同会社カサージュ 代表
主任介護支援専門員/BCAO認定事業継続管理者/看護師
急性期の看護師を経験した後、1999年に介護福祉の世界に転向
前職場では、介護事業の運営と約400名の部下育成に携わる
現在は、独立し居宅介護支援事業所を運営する傍ら、介護研修事業を展開
特に、介護BCPは介護現場とBCPの両方を理解している講師としてさまざまな方面から高く評価をいただく

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