介護接遇が上手くいかない理由

介護コラム
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最近は、介護現場での接遇の研修を依頼されることも増えてきました。介護現場に接遇が必要なのかどうかを迷っておられる経営者の方もいらっしゃるかもしれません。そこで、ここでは介護接遇を徹底するとどんなメリットがあるのかを解説していきます。

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接遇と聞くとどんなイメージ

「接遇」という言葉は一度ぐらいは聞いたことがあると思います。では、接遇と聞くと、どのようなイメージを持たれるでしょうか。

接遇というのは、おもてなしの心を持って接遇マナーに則った対応をすることです。接遇を受ける場面として、ホテルや空港、テーマパークなどの接遇をイメージする方も多いかもしれません。

しかし、介護接遇とこれらの接遇とは少し違います。

接遇の種類

接遇は場面に応じた考え方とスキルが必要です。ここを理解していないと、いくら接遇の研修を受けても意味がないのです。しかし残念ながら、接遇講師自体がそのことを理解せず、現場で使えない「接遇マナー研修」を行っていることが散見されています。

そのような研修を受けた人は、介護に接遇なんか必要ないと感じ、そのような現場では本当に必要な介護現場での接遇が浸透しないのです。

私は、接遇を場面によって大きく4つに分けて考えています

①非日常的な場面での接遇
日常の生活を忘れて、旅行へ行ったり、高級なホテルや旅館、レストランなどに滞在する場合に受ける接遇です。このような場面では、日常生活を忘れさせてくれるような接遇が必要です。

②日常の場面での接遇
日常生活を送る上で客の立場として受ける場合で、たとえば、スーパーマーケットやサービス業の従業員から受ける接遇です。日常の場面での接客があまりにも、よそよそしいと居心地が悪く感じることもあります。

③医療現場での接遇
病院を訪れる患者さんは、不安を持ちながら、大丈夫だろうかや、病気を受け入れないといけないという思いを抱いています。また、病院を訪れるのは患者さん本人だけではありません。それぞれの心情をくみ取り、少しでも不安が緩和されるような接遇が必要になります。

④介護の場面での接遇
介護の場面は、利用者にとっては日常生活の延長上にあります。それぞれの自分らしい暮らし方や価値観がある中で、自分でできない部分を手伝ってもらい生活していくことになります。それゆえ、相手のことを良く知り、大切にしているものや望んでいることを最大限に配慮した接遇が必要になります。

介護接遇の難しさ

介護を受ける人の、暮らし方や価値観は一人ひとり違います。毎日いろいろな人と楽しく過ごしたい人もいれば、一人でゆっくりしたい人もいます。外出することが好きな人もいれば、家からあまり出たくないという人も。また、身体状況によっては必ずしも望んでいるような生活ができるとは限りません。

対応する職員の言葉遣いに対しても、堅苦しい敬語は好きではないとおっしゃる方も少なくありません。だからといって、フレンドリーにため口で会話をしていると不快感をあらわにされることもあります。

このように、介護の提供内容と同様に、その接遇についても個々によって全く違うところに介護接遇の難しさがあるのです。また、型のある接遇であればマニュアル化して、統一した接遇を行うことが可能です。しかし、介護接遇のように個々のご利用者が望まれる接遇をでは、マニュアル化は非常に難しく、介護従事者のスキルを上げていく必要があるのです。

介護接遇に大切な3つのポイント

介護の現場で、高級レストランや飛行機のビジネスクラスで受けるような接遇を行っても、ご利用者の満足感は満たされません。

介護現場での接遇で重要なことは、相手の方の「心」にフォーカスすることです。相手の気持ちを考え、望んでおられることに応えることが大切です。

そのためには、

①相手の気持ち引き出す力をつける

②相手の気持ちを想像する力をつける

③常に相手の立場に立った考え方が出来るようになる

の3つのポイントが重要です。

つまり、よくある接遇・マナーで教えてもらうような敬語の使い方や、お辞儀の仕方、身だしなみよりも大切なことがあるのです。ここを、一番に教えられないような介護接遇の講師からの研修をいくら受けても、ご利用者の満足感を上げることは出来ないのです。

介護接遇の大切さ

介護接遇の向上は、介護の質の向上に直結します。

これまで、接遇マナー研修を受けたけれど、効果が感じられなかったのは、ご利用者の立場に立った接遇・マナーを行うためのスキルを学ぶに至らなかったからでしょう。

介護技術は経験値に比例する部分がありますが、介護接遇はその考え方を知り、常に意識することで介護の経験年数に関係なくスキルを向上することができます。ですから、新人からベテランまでが同じように介護接遇力を上げることが可能なのです。

また、介護の現場では、ご利用者本位のサービス提供が基本にはなりますが、必ずしもそれが叶わないこともあります。また、無理な要求をするご利用者やご家族がいるのも事実です。そのような場合、相手との関係性が悪くなることも見られます。しかし、そのような場合でも、介護接遇力を上げるトレーニングをしていると、相手の立場に立った目線でものを考えることが可能になります。それにより、問題を大きくすることなく、解決できているというケースもしばしば見られます。

良い介護施設を作るコツ

これまで見てきた多くの介護事業者で、職員の介護接遇力が高いと感じる事業者は経営が上手くいっている傾向にあります。逆に、いくら立派な建物やしつらえを整えていても、職員の介護接遇力の低い事業者は経営で苦戦していると実感しています。

つまり、

『良い介護施設=介護技術×介護接遇力』

であると考えられます。つまり、介護技術が優れていても、介護接遇力がマイナスであれば全体としてはマイナスになり、介護技術と介護接遇力は良い介護サービスの両輪であると言えるのです。

選ばれる介護事業者になるための第一歩として、職員一人ひとりの介護接遇力をチェックするところから始めてみてはいかがでしょうか。

寺岡 純子

合同会社カサージュ 代表
主任介護支援専門員/BCAO認定事業継続管理者/看護師
急性期の看護師を経験した後、1999年に介護福祉の世界に転向
前職場では、介護事業の運営と約400名の部下育成に携わる
現在は、独立し居宅介護支援事業所を運営する傍ら、介護研修事業を展開
特に、介護BCPは介護現場とBCPの両方を理解している講師としてさまざまな方面から高く評価をいただく

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