
今日はそのあたりのお話を、介護事業を経営する視点で詳しく聞かせてくださいね。
派遣介護士を利用する理由
事業者が派遣介護士を利用するのは
- 職員が採用できない
- 夜勤の働き手がいない
が主な理由です。
人員不足が改善できない介護事業において、サービスを提供する人が足りなければ、運営規定を満たせず定員数を減らしたり、入居の受け入れを断ったりしなければなりません。
実際に現在も入居希望者が後を絶たない特養で人材不足のため受け入れができないケースが全国的に起こっています。
これらの事態を避けて、売上の確保のために、また、サービスの継続のためにやむなく派遣介護士を利用して介護事業の経営を継続せざるを得ない事業者にとっては、派遣介護士は頼みの綱とも言えるのではないでしょうか。
特に首都圏においては正規、非正規を問わず介護職員の採用が非常に困難で有効求人倍率は4.5倍以上、特に東京では7.8倍という状況になっています。(全産業の平均有効求人倍率は1.52倍、2018年12月)
介護職が居ないわけではなく、派遣介護士という選択をする人が多いことも東京の特徴のように感じます。
派遣介護士という働き方
なぜ派遣介護士が人気なのでしょうか。
派遣介護士には、
- 登録型派遣:派遣会社に登録し、数か月程度の短期間の派遣に対して派遣会社と雇用契約を締結する。
- 紹介予定派遣:派遣先との直接雇用を前提に、就業前に派遣形態で勤務する。
- 常用型派遣:派遣会社と直接雇用契約を結び、長期的に就業する。
の3種類があります。
いずれの場合にも直接雇用で支払われる給与よりも高い時給が設定されていることが、労働者にとっての魅力です。ほかに、時間などが自分のスタイルで働けること、本来の業務に付随される事務的な業務は免除されることなどが派遣介護士が人気の要因のようです。
事業者が派遣介護士採用するメリット
介護事業者が派遣介護士を採用するのは、人員不足を補う為です。
中には良い介護士が居れば引き抜きをと考えている所もありますが、あまり成果は無いのではないでしょうか。
理由は派遣介護士は、派遣という働き方をあえて選んでいるからです。
派遣介護士を採用するデメリット
派遣介護士を介護事業者側から見たときのデメリットは、人材としてはみなせないことです。
派遣社員に対する業務の指揮命令権は派遣会社にあります。したがって指導は、派遣会社を通じてしてもらう必要があります。
派遣で働いている介護職の特徴として感じるのは、
- 給与が最優先
- 面倒な仕事は避けて、自分のやりたいことだけする
- 業務に必要な研修を十分に受けていない
- 仕事を手伝ってやっているという態度
残念ながら、上記のような派遣介護士をたくさん見てきました。そのような中で事業所が目指している理念や説遇を浸透することは難しいとと思います。
しかし、不足分の人員補充としては十分です。
派遣介護士ー利用することで経営に及ぼす影響
質の悪い派遣介護士を採用した場合の悪循環として起こっているのは
人材不足・収益悪化➡派遣採用➡介護の質の低下➡利用者、スタッフの不満
という負のスパイラルです。
不満を抱えた事業所の職員が疲弊して退職するようでは本末転倒です。
派遣介護士の雇用は今後どうなる
ただし、すべての派遣介護士が悪いわけではありません。
中には、素晴らしいスキルを持った派遣介護士もいます。
では何故、質の悪い介護士がやって来るのでしょうか。
その理由は、派遣費用の安い派遣会社を選んだためです。
派遣会社への支払いは経営を直接圧迫するため、我々としては出来るだけ押さえたい所です。
しかし、安易に派遣費用の安い紹介会社を選択すると痛い目にあいます。
まさに「安かろう悪かろう」の状況です。業務の指揮命令権のある派遣会社は働きぶりを直接見ることはありません。
これに対して大手の介護事業者は、派遣の採用を控え、自社社員の処遇の改善に動き出しています。
経験のある介護福祉士を獲得し、処遇改善加算を取得することも大きく影響しています。加算分を職員に還元することで介護職員の給与を増やすことで人員不足を改善することが可能になるでしょう。
質が悪く、指揮命令権のない派遣介護士に費用を使うより自社の職員に還元したほうが経営状態は良くなることは明確です。
結論
これからは派遣介護士に頼らず自社の介護職員への処遇を改善するべし