
晴れてケアマネジャーになっても、最初は先輩ケアマネのケースを引き継ぐことも多いでしょう。しかし、慣れてくると新規のご利用者を一から担当してケアプランを作成するようになります。
そうなると参考にできるアセスメントやケアプランがなく、全て自分で作っていかなければなりません。
ここでは、どうすればアセスメントを効率よく行え、ケアプランの原案の作成につなげる事ができるのかを新人ケアマネがやりがちな失敗例も合わせて解説していきます。
アセスメントとは
アセスメントとは、ご利用がいま置かれている状況を確認し、生活上の課題を明らかにして、その課題を分析して解決するための方法を明らかにするために実施します。
このアセスメントを苦手とするケアマネは非常に多く、きちんと分析がなされていないケースも散見されます。
しかも、初回のアセスメントはほとんど情報がなく、さまざまなことを確認しなくてはならないため非常に大変です。ただし、アセスメントに何時間もかかって聞き取りをしていてはご利用者も疲れてしまいます。
しかし、アセスメントはこれからどのようなプランにするのかの叩き台となるケアプランの原案を作成するためには必要不可欠なものであり、ご利用者が抱えている課題とその解決策を
アセスメントが上手にできないケアマネジャーは本来の職務が果たせないと言っても過言ではありません。
アセスメントシートの活用
アセスメントの方法は厚生労働省が指定する「課題分析標準項目」の23項目を満たしていればよいということになっています。ただし、どこの居宅でもアセスメントを効率よく実施するためにアセスメントシートを活用していると思います。保険者によっては運営規定でどのアセスメント方式を使用するのかを定めなければならないとしているところもありますが、前途の23項目を満たしていれば自作のアセスメントシートを使用しても差し支えありません。
初心者ケアマネの失敗するポイント
アセスメント方式にはいろいろな種類があり、それぞれに特徴が見られます。ただし、どの方式を使用してもかなりの量の情報を分析していくことになり、ここがケアマネジャーを悩ませる部分になります。その中でも、新人ケアマネが陥りやすいポイントを見ていきましょう。
1.アセスメントが尋問になってしまう
たくさんの項目を聞いて行かないといけないアセスメントでは、質問と回答の繰り返しに陥りやすいです。しかしこれでは、ご利用者は尋問されているような気持になってしまいます。特に記入シートを持参して最初からチェックをするために質問をしてすべての項目を埋めていくやり方ではこのような傾向が強くなります。この場合「●●はできますか?」という質問の仕方をしがちになります。
2.アセスメントシートのチェックで終わっている
アセスメントシートにはチェック項目があり、自立してできるのか、介助は必要なのかを記入していきますが、新人のケアマネはこのシートのチェックをするだけで終わっていることがあります。アセスメントでチェックするのはどの領域の課題があるのかを抽出するためですので、ここで終わっていては分析をしたことにはなりません。
特にご利用者などからあるサービスを利用したいと先に申し出があった時や、ケアマネが十分な分析をせずにサービスありきでプランを考えてしまっている時にはこの傾向が強くなります。
3.話が脱線してしまい肝心なことが聞けていない
アセスメントが質問を繰り返す尋問ではいけませんが、限られた時間で多くの情報を取得しなければならないため話があまりにもずれてきてしまい、肝心な部分が聞けていなかったということも起こりがちです。相手ペースに引きずられてしまいすぎないように主導権を握って行けないことがあります。
4.本人の話しか聞いていない
本人の話だけでは信憑性に欠けることもあります。特に初期の認知症などの場合ではあたかも事実であるように話をされることがあり、ケアマネもその話を鵜呑みにしてしまい後に家族に確認すると少しずれがあったということはよくあります。また、本人の気持ちと家族の気持ちが違うこともあるため、アセスメントは本人だけに行うのではなく主介護者を交えて行う必要があります。
5.ケアマネの意見が書かれていない
アセスメントが事実のチェックと必要なサービスの抽出で終わっていることがしばしばあります。重要なのは現状を自立した生活に近づけるためにはどうすればよいのかを分析し、ケアマネとしてはどのように考えるのかということです。したがって、事実の羅列のみのアセスメントはアセスメントとは言えず、実地指導でも指導の対象となってしまいます。
6.サービスありきでプランが後回し
アセスメントで話を聞いていると、その課題に対してはこのサービスを使えば解決できると安易にサービスを提案するということが新人ケアマネにはよく見られます。また、最初から特定のサービスを利用することが前提となってアセスメントを行っており、構成中立な視点で課題を見れていないこともありがちです。
効率的なアセスメントを行う3つの手順
効率的に確実なアセスメントを行うにはコツがあります。ケアマネとしてのコミュニケーション技術を向上させていくことにもつながりますので、以下のような3つの手順で行ってみましょう。
1.1日の生活をイメージしながら質問する
アセスメントをする時にはシートにかかれている順番に質問をしないようにします。朝から夜寝るまで、また夜中の様子までの1日をどのように生活しているのかをイメージできるように話を聞いてみるようにしましょう。そうすることで、自然な形で質問をすることができご利用者は尋問されている意識は薄れていくことに加え。ケアマネとしてもその場面がしっかると理解でき課題や解決策が見つけやすくなります。
2.話を深掘りする
生活の状況を確認していく中で課題と思われる点については「それは具体的には?」「というと、どういうことですか」など話を深掘りできるような質問を続けるようにします。そうすることで。解決していかなければいけない部分を明らかにすることができます。表面的な解答だけでなくどこに要因があるのかを知ることで、相手も話をしながら自分で納得できる課題の解決方法を見つけていくことも可能になります。
たとえば「●●はしていますか」というような質問の仕方は「はい」「いいえ」で答えが完結してしまい、このような質問の仕方をクローズドクエスチョンといいます。このクローズドクエスチョンを繰り返すと相手は尋問をされているような気分になりがちです。したがって質問をする時は基本として「●●についてはどうですか」「●●はどうされていますか」というようなオープンクエスチョンの形でするようにしましょう。
3.視点を広く持つ
アセスメントは本人、家族、主治医、サービス事業所からの情報を収集します。アセスメントはケアマネが課題の解決に向けて最善の方法は何かということを分析するために行うものます。したがって、本人や家族の意見に振り回されるのではなく、介護や医療という幅広い視点を持ちアセスメントをするようにしましょう。
また、ケアプランを立てる時にも介護保険のサービスだけではなく介護保険外のインフォーマルなサービスも必ず視野に入れていくようにします。
そして、アセスメントを実施した後は速やかにシステムへの入力や記録を行うようにします。そのためには時間を確保するタイムマネジメントも重要です。
まとめ
アセスメントは慣れるまでは大変と思われるかもしれません。しかし、アセスメントが不十分だとご利用者にとって本当に良いケアプランがどのようなものなのかや、状態の改善が見られているのかがあいまいになってしまいます。
アセスメントの能力が向上してくると、徐々に時間をかけて考え込まなくてもその場で好ましいケアプランの原案が浮かんでくるようになります。そうなるとその後の事務効率が上がっていくことにつながります。新人の頃にこそこのアセスメントをしっかりと行うことを意識づけて、スキルアップをして行ってください。