腎臓病と食事制限の成功のコツ

家族介護
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ケアマネジャーとして担当しているご利用者の中には腎臓病をもち、食事制限を指示されている人もいると思います。腎臓を悪くし、医師から食事制限の指示を受けている人が不満に感じている事で多いのは、味がおいしくない、調理が面倒というようなことが挙げられます。また、介護を受けられている場合、ヘルパーがどこまで治療食に対応できるのかが大きな課題となります。ここでは、よりおいしく、治療食を工夫することで食事を楽しいものにできるようなコツをお伝えしていきます。

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腎臓の病気と介護

腎臓の働き

腎臓はそら豆の形をした臓器で、左右に1個ずつあります。絶えず大量の血液が送り込まれてその働きをしています。主な機能は次の通りです。

1.体内のタンパク質が分解された際に発生する尿素やクレアチノン、尿酸というような物質や老廃物を血液からろ過し、尿として体外に排出します。

2.体内の水分やナトリウム、カリウム、リン、カルシウム、重炭酸イオンなどの電解質の割合を一定に保つようにします。

3.腎臓から様々なホルモンを産生し、血圧の調整や赤血球の成熟、骨の代謝に関与し、骨粗しょう症を予防するために重要な役割を果たすビタミンDの代謝を促します。

高齢者に多い腎臓の病気

1.糖尿病性腎症

糖尿病の合併症で、糖尿病を発症後5~10年経過したのちに発症します。腎機能が徐々に低下していき、やがては腎不全の状態となり、悪化すれば透析療法が必要となります。

2.慢性腎不全

腎疾患の発症により腎機能がもとの状態の戻らず進行することで、腎臓の尿生成に関わる組織が減少し浸透圧の維持や体液組成のバランスの維持が出来なくなった状態となる。慢性腎不全の状態になると腎機能をもとの状態に回復することは非常に難しくなります。

3.腎硬化症

腎硬化症は、長期間の高血圧により腎臓の毛細血管や糸球体が固くなり、血液のろ過が上手くいかずに腎機能の低下をきたすものです。高血圧を放置すると腎機能紹介が進行し、最終的には腎不全となり透析療法が必要となります。

腎臓病の治療

腎臓病の食事制限

腎臓病の治療では安静、薬物療法、食事療法が重要となります。食事制限では腎臓の機能低下の度合いや症状などにより医師からたんぱく質、摂取カロリー、塩分、水分、カリウムの量などの指示が出されますので、それに従った食事の摂取が必要となります。

たんぱく質を多くとりすぎると、腎臓から排出される尿素窒素やクレアチニンの量が増え、腎臓に負担をかけることになります。たんぱく質は肉や魚以外にも、ごはん、パン、イモ類、果物、野菜にも含まれているため注意が必要です。

たんぱく質の制限とともにエネルギーを不足させないことが、体内の尿素窒素を増やさないためには重要なことですが、糖尿病の場合にはカロリー制限が必要になります。

腎臓でのナトリウムを排泄する能力が低下しているため、塩分の制限がされます。また。高血圧を合併している場合もあり塩分制限は重要となります。

腎機能が低下している場合、カリウムが排出されず血液中のカリウム濃度が上昇することがあります。血液中のカリウム濃度の上昇は不整脈や心停止など重篤な状態を引き起こす原因となります。したがってこのような場合にはカリウム制限をする必要があります。カリウムはあらゆる食品に含まれていますが、特に多く含む食品は生果物や生野菜、海藻類などです。

体内の水分を排出する機能が低下し、むくみやその他の症状によっては水分量が制限されることがあります。飲む水分だけでなく食事に含まれる水分にも気を付ける必要があります。

ヘルパーでの食事の援助の課題

このように腎臓病では食事が症状やその後の予後を決める大きなポイントです。しかし、治療食は個々の細かい指示にしたがって調理をする必要があり、訪問介護で通常行われるヘルパーでの調理とは少し違うものになり、知識や技術が必要となります。また、治療食のように特段の配慮をもって行う調理は介護保険では身体介護に位置付けられるため、支給限度額との兼ね合いも考慮する必要があります。

ご利用者の治療に影響を及ぼす食事を訪問介護のヘルパーが担うには、荷が重く他の方法を検討する時期に来ているのではないでしょうか。

食事制限を確実に実施する

2016年に地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理の在り方検討会の発表では「配食事業の栄養管理の現状と課題について」のなかで、「食事療法が必要な人は約3割、そのうち、約半数のものは対応がされていなかった」と報告し「管理栄養士/栄養士の関与にない事業者では、適切な治療食の提供が不十分である可能性」を指摘しています。 

食事制限が必要であるにもかかわらず、適切な食事を提供するためには管理栄養者などの専門家が関与することの重要性が浮き彫りになり、以前は訪問介護のヘルパーで見様見まねで行っていた調理から、最近では専門職が関与している配食サービスの利用へ変化する流れになってきています。

配食サービスを実施している事業者は増えてきており、治療食のメニューのある所も多くはないですが増えてきました。ところが、腎臓病の治療食では塩分やカリウムの制限があるため、味が良くないものもあります。食事は毎日のことなので、口に合うサービス事業者を探すことが重要なポイントと言えます。

便利で使いやすい食事の宅配サービスは治療食もOK!
食事の準備を手軽にしたい方のために、高齢者の治療食にも対応しているサービスを厳選。それぞれの特徴が比較できます。冷凍保存できる食事の宅配サービスは、一人暮らしや、小学生のお留守番の時の食事にも活用可能。安全かつ便利で忙しい方にもピッタリ。

まとめ

腎臓業と食事の関係についてまとめてみました。食事制限はつらいことも多いですが、腎臓病の治療にとっては重要なことですので、少しでも適切でおいしい食事がとれるように工夫していきましょう。

  • 腎臓病の食事のポイントは たんぱく質、摂取カロリー、塩分、水分、カリウムの量制限を守る
  • 管理栄養士などの専門職が関わる
  • ケアマネジャーとして様々な情報集をして口に合うものを選ぶ手助けをする
寺岡 純子

合同会社カサージュ 代表
主任介護支援専門員/BCAO認定事業継続管理者/看護師
急性期の看護師を経験した後、1999年に介護福祉の世界に転向
前職場では、介護事業の運営と約400名の部下育成に携わる
現在は、独立し居宅介護支援事業所を運営する傍ら、介護研修事業を展開
特に、介護BCPは介護現場とBCPの両方を理解している講師としてさまざまな方面から高く評価をいただく

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